最果てにて

    前略。
    いろいろと疲れ果てて、心も体もなんだかなあという状態に陥った私は、
    見知らぬ温泉宿でのんびりとくつろいでみようかな、などと思い立ち、
    山形と青森との県境の無人駅を目指した。
    盛岡まで新幹線で飛ばし、JR乗り潰しの一環として花輪線を経由してみたが、
    雪に埋もれた世界だ。ただ単に白い近景が過ぎていくだけで、なんの事もなく、
    八幡平は白い闇の向こうだった。
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    東北の草津と言われる某温泉にて。
    無人駅から4kmほど山間に入ったところにある温泉なので、晴れていれば歩いて
    みようかとも思ったけど、吹雪が凄まじく、宿の送迎車にて宿入りやむなしでしょう。
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    「日本秘湯を守る会」 というのがあるらしい。
    賑やかな歓楽街のようなものを嫌う私にとってはうってつけとも言えよう。
    真っ白な杉林の山間を抜けてぽつんとある集落に辿り着く。
    非常に古い木造の建物は、古き良き昭和の雰囲気に包まれており、
    なんとも言い難い気分、丁度スキー場の安宿のような感じだ。
    正直、宿としてはどうなのよ?と思われた箇所が幾つもあったが、
    そんなものはどうでも良いか、と思わせる何かがあった。

    さて、チェックインを済ませてさっそく温泉じゃー!
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    しかし、こればかりは言葉と映像だけでは表すことができぬ感覚の世界。
    鼻をつく硫黄の匂いと浴槽のぬめり、天井から滴る雫の音。
    露天風呂は正直ぬる過ぎで注意が必要でしたが、もうこの内風呂だけでも
    十分でしょう。感服致しました。こんな所で一週間くらい世間から断絶された
    生活をしてみたいな、とも思う。
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    メシ食っても独り。
    独りは嫌いじゃないがメシ食うときはやっぱ侘しいもの。
    本日の宿泊客は私を入れて2名のみ、だったようです。
    テレビは魁皇関が幕内最多勝を決めるシーンを繰り返していた。
    私はバーボンを水割りにし、宮澤賢治の童話を読んでいた。
    そして、閉ざされた山奥の宿の屋根に、しんしんと雪は降りつむ。
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    翌朝、朝食後に、ロビーに出るとストーブの前で猫が寝転んでいた。
    いやー、あんた、ちょっと太りすぎやろwww
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    撫でても肉球ふにふにしても、されるがまま。しばらく和んでみました。
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    えーと・・・なんか大雪警報とか出てるんですけど・・・c⌒っε',)っ
    ええ、ぶっちゃけこの旅はここでおしまいにしても良いのです。が。
    ここまで来てそりゃーねーだろと思い、ひたすらに北進することに。
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    弘前、青森、蟹田で乗り継ぎ、本州の最果て 「三厩」 に来た。
    実際は竜飛岬の下にも電車が走っているのだが、感覚的にはここが、
    本州の果てだと思っていいだろう。
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    駅を出て、海を見に行く。
    路面が見えるほどには除雪されていなく、まるでスキー場のような風景。
    とはいえ、建物は港町のそれであり、奇妙な感じがする。
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    国道を越えて海辺へ・・・と思ったが雪が深い。ラッセルして海岸線まで出る。
    ・・・が。当たり前なのだが、冬の寒々しい景色しかありゃしねえ訳で。
    俺何やってんだろ感がぐんぐんと膨らんできて、非常に困ったのだが、
    いやいいんだ、これでいいんだ、意味のないことをしよう。と、開き直ることにする。
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    西に見える山間の向こうに、うっすらとした夕陽が暮れた。
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    青森まで戻ってビジネスホテルに泊まる。
    大衆食堂で食べるホタテのバター焼きの旨いことこの上なし。

    翌朝、朝5時半に起きて南下開始・・・そして、秋田駅にて。
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アッー!!

    酒田行きが運休!次は12時過ぎ!昨晩必死に考えた乗継計画\(^o^)/オワタ!
    前に脱線事故も起こしてるし、そりゃ神経質にもなるわな。天候ならばしょうがなか。
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    そんな訳で横手方面から北上線に乗り、ほっとゆだ駅で温泉に入る。
    ついでに散歩もしてみたが、ここも県境で雪深い場所。
    観光客は殆どなく、歩いているのは老人ばかり。
    あとは、除雪に追われる住民が大変そうだった。
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    北上から新幹線。あっという間に、またあの喧騒へと戻る。

    そして一応、この旅は何だっけ?などと考えを巡らせてみるが、温泉宿の夜明け後、
    布団に包まって雪の舞う窓辺を眺めた数十分間、ここに集約されていた気がした。
    遠い昔、こんな風景を見たことがあったような・・・。
    ・・・貧乏で小さな家に家族で身を寄せ合っていた時期があった。
    今は小金持ちで、少々の贅沢はできる・・・が、何もかもが物足りない。
    本当の幸いは 「あそこ」 にあったのかな、とも思う、が、「あそこ」 には
    もう戻ることはできない。

    「ここ」 は、いま、幸せか?
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by yuzu_ponz | 2010-01-18 18:33 | チラシの裏 | Trackback | Comments(0)