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北海道2006 Part 1 -島をまわる話

  帰ってきてから半月以上が経ちますがなんというか、あれやこれやと考えることを
  放棄しちゃってる気がするんですね。一人旅というものは、終わったあとの思索こ
  そが大事な訳なんですが。

  「ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら
  峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく一あしずつですから」 (宮沢賢治)


  ―――あんまりクドクド書いてもしょうがないので、この人生観の究極の形の
  一つを取り上げてみる。後で考えると、この言葉の意味ばかりを考えていたよう
  にしか思えなくなっていたが、どうにも考えがまとまらないし、それをここに書い
  ても詮無き事なのだろう。

  さて、事実を、淡々と。 ちょっとずつ記述してみましょう。




*1日目:稚内→利尻島

  9時45分に羽田空港を出た飛行機は2時間も要せずに稚内空港へと到着。
  9月中旬で多少肌寒いかと思っていたのだが、存外に暖かい。
  どうやら台風のおかげで、いろいろと気候が狂っているようだ。
  空港からは乗合バスで市内へ向かう。

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  今回のいでたちは、ボストンバッグとデイパックのみという軽装。
  旅を重ねるにつれて、どんどんと荷物が少なくなっていく感じがとてもよい。
  空港からのバスはフェリーターミナルまで乗り入れているが、次のフェリーは
  15時半だ。荷物をコインロッカーに投げ込み、辺りを散策することにする。

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  稚内市で徒歩圏内の観光名所といえば、ノシャップ岬をおいて他にはないが、
  もう何度も行った場所で正直飽きている。
  今回は稚内の高台にある公園をぶらつくことにする。

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  観光名所の常として、大して思うところもなかった。
  ただただ、深い深い青空に見とれるだけ。そしてとにかく、空気が美味い。
  南極探検隊のソリ犬の記念碑があり、しげしげと見入る。犬ってすごいな。

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  戻り際に昼飯を食べようと思っていたけど、ランチタイムのあとは営業していない
  店ばかりであった。なんたる愚!都会の常識を捨てないとだめな事を忘れていた。
  15時半にフェリーが出る。まったく、船というものは何度乗っても良いものだ。

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  フェリーのあとを追う、翼。
  おばはんの投げるえびせんを見事にキャッチする様はなんとも見ものだ。
  ウミネコってすごいな。

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  2時間弱の航海で利尻富士が見えてくる。なんとも残念なことに、うっすらと
  霞みが掛かっていた。となりで見ていたオッサンと少しばかり会話。

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  利尻島に着くや否や、猛然と下船し、西へ急ぐ。
  このフェリーは困ったことに、ちょうど夕陽が落ちる時間帯に着くのだ。
  2年前も同じ時間帯に着いたが、すぐさま壮絶な夕景に出会った。
  今回も急がねば。
  そう思い夕日ヶ丘を目指したが、どうにも時間が足りないらしい。
  しかたなく、港に近いペシ岬に登ることにした。
  先客は家族連れと一人の旅人だった。
  早速、夕陽を眺める。
  北限の島、礼文島の南端をかすめて落ちていく夕陽には、何物にも代えがたい
  説得力があると思う。そしてそれは2年前と、少しも変わらない風景であった。

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  残念ながら、日没の瞬間は見ることが出来なかった。
  赤色は茜色、茜色は鼠色に転じて今日という日が終わる。

  日没を見送った後、おもむろに電話を掛けた。
  オフシーズンということもあり、宿の予約など全く考えていなかったのだ。
  せっかくなので、久々にユースホステルに泊まる事にした。
  ちょっと誰かと話でもしてみたかったのだ。
  しかし、想像以上に閑古鳥が鳴いており、人が全くいなかった。
  私は荷物を置くやいなや、すぐに夜の街に出て行く。

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  鴛泊の目抜き通りにあった定食屋と思しき店に入ると、先客が居た。
  話を聞くと本日利尻富士に登ってきたとの由。
  1700mの山を日帰りで登れるってすごいな。
  私は富士山の3000mで高山病に罹って以来、完全にトラウマになっていて
  山は登るものではなく見るものだとの立場をとっている。
  出てきた定食を前に、彼の話を聞く。いま大学院生で教員免許を取っている
  最中らしい。若いうちに僻地の小学校に勤務したいと言っていた彼、理想に
  燃えるのはよいことだが、現実に打ちのめされなければよいのだが・・・と
  思いつつ、それでも、自分の夢を語れるってことはとてもいいことだな、
  羨ましいなと思う。

  それにしても、中島みゆきの夜会と思しき音楽が流されていて、落ち着いた
  穏やかな空間だった。7-8月のハイシーズンにくれば若者のドンチャン騒ぎが
  見られるのだろうが、私にはこちらの穏やかな時間のほうが好ましく思えた。

  翌日稚内から札幌へ帰るという青年にさようならと告げ、宿へ戻る。


*2日目:利尻島停滞

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  この時期、夜は冷え込むかと思ったが、思いのほか暖かかった。
  今日の予定は、2年前に成し遂げ得なかった、利尻島徒歩一周(約52km)
  の続きをやるつもりだった。
  円形に近い利尻島では各集落を時計盤の位置で表すのが都合がよい。
  そうすると、フェリーが入港する鴛泊が12時の位置であり、スタート地点だ。
  2年前はそこから半時計回りに歩きに歩いて、10時の位置まで進んだところで限界
  を感じ、見知らぬ神社にて野宿。さらに翌日は没夕方まで歩いて、同じく5時の位置
  にあるオタトマリ湖畔のキャンプ場まで歩いて、そこで力尽きたのだった。
  しかし、20kg近いバックパックを担いでよくも歩いたものだと思う。実にアホだ。

  ということで、今日は島内巡回バスでオタトマリ湖まで行ってから、残りの約20km
  を歩こうと思っていた。背中には軽いデイパックのみだから楽勝のはずだった。

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  島内を巡回する路線バスに乗り、オタトマリ湖に着いたのは9時過ぎ。
  とりあえずは湖を眺めておこうと思う。
  それにしても、路線バスの乗客は2~3人しか居なかったにも関わらず、
  観光バスが連なっており、ジジババが沢山いたのには閉口した。
  まあ仕方あるまいか。

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  売店でウニ寿司を食らう、美味い美味い。

  特に思うところも無く、オタトマリ湖を後にする。ここはまだ2年前と重複区間だ。
  そして、終の地であるキャンプ場を過ぎて 「いよいよスタートでぇす」 と、ひとりごちた。

  で、ちょっと展望台らしきものがあったので、登ってみた。
  そして東の海を眺めて。
  ・・・絶句。

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  なんか竜巻が発生しているんスけど・・・(´д`;)

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  ええい、ままよ、なるようにしかならねぇ。開き直って、歩き始める。
  金崎のバス停を過ぎる。2年前の終点だ。

  と、唐突に雨・・・( ゚д゚)<ちょ、おま! 叫んでも無駄だ。
  先生、これはネタの神様降臨ですか?真剣に考え込みつつ、傘を差す。
  突然に雷鳴が轟き、大粒の雨がざーざーと降り始めた。

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  運良く遭遇したセイコーマートに逃げ込む・・・待つ。待つ。待つ。
  30分は待っただろうか、一緒に閉じ込められていたオバちゃんと苦笑い。

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  ずっと立っているのも疲れたし、これはもう雨の中進むしかなかろうと思い、出発した。
  しかし雨脚は一向に弱まらず、ひざから下がずぶ濡れになる。
  「うへっ、こりゃだめだ」
  次のバス停の待合所に逃げ込んだ。
  小さな建物だが、風雨は十分に凌げる。なんと心強い場所なんだ。心底そう思う。
  バスの時刻表を見ると、次のバスまで1時間強。しばらくここで雨宿りをして、
  それでも雨がやまなければ、乗るしかないかな。
  そう考え、セイコーマートで買った昼御飯を食べながら、本を読んだ。

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  バスに乗り20分も進むと、皮肉なことに大変に天気が良くなった。
  どういうことだ!と思うが、何のことはない、山影だけに雲が掛かっていたのだろう。
  それにしても、一周完歩を目指したにもかかわらず、バス停1つ分とは・・・
  しかたなく、鴛泊界隈を散歩。それにしてもカラスが多い。

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  うだうだとしているうちにもう夕方が近くなっていた。
  オフシーズンで人が少ないのはいいのだが、日の短いことには閉口する。

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  利尻富士山麓にある温泉センターに向かい、今日一日の汗を流し、宿に帰った。
  昨日とは一転、人と話をすることが億劫で、すぐに寝込んでしまったのであった。
by yuzu_ponz | 2006-10-11 21:54 | チラシの裏 | Trackback | Comments(0)